正社員バックレ その1 テレビ番組制作会社
ところで俺はこれまでバイトを50社ほど、正社員15社をバックレてきました。
バックレ界では神話的存在のマーシーの112(バイト):2(正社員)よりもバランス的に質のいいバックラーじゃねえかな?と思いますが、バックラーはしょせんバックラーであり目くそ鼻くそです。
さて、そんなヤメタの人生最初の正社員経験は、歴史的な初日バックレで突然終わりました。
就職先は、
「テレビ番組制作会社」
はい。
人生初の社会人経験がコレはかなり強烈です。
過酷な労働環境とそれに見合っていない安月給であることは知っていましたが、
血迷うにもほどがありました。
にもかかわらずなぜこんな業界を選んでしまったのか。
当時、いつ終わるのかも分からない某公務員採用試験の勉強を続けていた俺は、他の学生たちがせっせと就職活動をしている中、1社も受けず、そのまま大学を卒業してしまいました。試験は不合格に終わり、就職浪人生活が始まりました。
いつまでこの生活が続くのだろうか?と思いながら何となく既卒者むけの転職サイトを覗いていると、このテレビ番組制作会社の求人を見つけてしまいました。直後、直感的に脳内で次のような人生フローが浮かび上がりました(可能性として)。
①異例の出世でディレクターになる
②キー局にヘッドハンティングされる
③女子アナと遊びまくる
④女優と遊びまくる
⑤一般人のエリート女性会社員と結婚する
⑥人生大成功
アホやろ。
でもけっこうマジでこの人生想定に取り付かれていた俺は、
ほとんど迷うことなくテレビ番組制作会社の求人に応募してしまいました。
脳は既に腐り果てていたに違いありません。
採用選考のフローは、就活サイトから応募⇒面接2回⇒採用 という感じでした。面接ではあることないことを話しまくり、とにかく印象に残る人物を演じました。若気の至り極まる面接でしたが、新卒採用ってこんな感じで失敗を繰り返して少しずつ対策が洗練されていくのだと思います。
ともあれ、あってないような採用選考を受け(実は誰でも通る)、あっさりと内定が出てしまいました。人生初の就職活動にして人生初の正社員採用という現実に浮かれていたことも認めます。自分を客観視し、企業研究をし、人生計画を立て、冷静に効果的な就活戦略を練って実践する・・・ということをしませんでした。就活=恋愛 なんてことを言う輩がいますが、あれらは全て、就活に成功した奴らの戯言です。俺にとって就活とは、人生の明暗を分ける地雷まみれの戦場でしたし、おそらく多くの人々にとってもそうだったのではないでしょうか?あるいは、今現在就職活動を行っている大半の学生たちにとっても。
さて、上述の妄想にとらわれたままノリでそのままテレビ番組制作会社に就職してしまった俺は、公務員採用試験をあっさりと放棄し、意気揚々として入社日を迎え、出社しました。アホだったんですよ。ほんと。
はい。現実はこんなもんです。
入社二日目にして昼から翌朝までぶっ通しの夜勤が始まるような会社でした。
昼から朝。13時から翌日8時ごろまでです。約20時間労働です。絶句だぜ!
ある意味、予想通りの労働環境でしたが、いざ自分の目の前にこの現実が突きつけらるとなると話は別です。当事者になるとはこういうことですw
人生は近くで見ると悲劇だが、 遠くから見れば喜劇だ。
チャップリンの名言ですが、マジでこうなりました。
入社日の通勤中俺の頭の中では既に女子アナたちとの3Pが行われていましたが、
これはまさに、遠くから見た喜劇だったのです。自分に身に起きるわけもない願望妄想を、他人事だと思って楽しんでいただけなのです。
ここで勘違いしてはいけないのは、ヤメタは初日しか出社していない点です。
つまり、二日目からはこんな無茶苦茶な労働が待っていた!ということです。
どういうことか?というと、以下の通りです。
入社初日、ヤメタの教育係である前田さん(仮名。前歯がないロン毛パーマの兄ちゃん)との会話。
前田氏「おうヤメタ。おれがお前の教育係だからよろしくな。早速明日から編集作業を横で見てもらうからな」
ヤメタ「あ、はい(前歯がない。残っている歯も黒い。)」
前田氏「明日は・・・そうだな、昼の1時くらいから来たらいいぜ」
ヤメタ「え??(聞き間違いか?言い間違いか??)」
前田氏「明日は13時から翌朝の8時くらいまでになると思うわ」
ヤメタ「!?」
前田氏「まあ、最初はクソほどキツいけどがんばれや。今でもキツいけどな」
ヤメタ「・・・・・・・」
本能が「ヤバい」と叫んでいる。
ダッシュで逃げろ。
とにかく逃げろ。
逃げねば戻れなくなる(どこに?)。
一瞬で俺は人生初の正社員バックレを決意しました。
入社初日に「辞めます」なんて言える鬼メンタルは持ち合わせていません。
逃げるしかないのです。逃げる。逃亡する。逐電する。出奔する。バックレる。
初日の労働(?)を終えた俺は、どこにも立ち寄らず自宅に最短距離で逃げ帰りました。
実家につくとオカンがいて、何かとてもホっとしたのを覚えています。
・・・おれはこの生活(?)を守らなくてはならない・・・という謎の決意をし、
携帯の電源を切って翌日を迎え、静かに次の正社員での仕事と、つなぎのためのバイトを探し始めました。オカンには、「よく考えたらテレビ見ないのにテレビの仕事とか無理だった」と軽く伝えました。オカンからは「そうだと思った」と言われて、俺の人生初の正社員バックレは完了しました。
以降、次の正社員の仕事に就くまで、いくつものバイトをバックレまくります。
無限に続く敗北人生の幕開けでした。
つづく